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カタ・・・ 少しもしないうちに着いた資料室。 教科書も、出席簿も投げ出してここに来てしまったから、チャイムが鳴ればまた教室へ戻らねばならない。 「はぁ・・・・」 カタン、と静かに椅子を引いて座れば、小さく安堵の溜息が出た。 なんで なんで、恋っていうやつは。 つい昨日まで普通にいられた仕草も、笑顔も、魔法のようなものにしてしまうんだろう。 おかげでコッチは魔法にかかりっぱなしでついに慎の顔まで見れなくなってしまった。 「・・・見たいのに・・。」 見れない。 好き過ぎて、胸が苦しくなりすぎて、眩しすぎて――――・・! ・・見てる自分を、相手に見つかるのが、何だか凄く恥ずかしい、のだ・・・ 「だからってさ・・・・」 授業を放ッぽり出すのは、教師としてはいかがなものかと自分でも思う。 でも・・・・ 「あー・もうっ!どうすりゃいいんだよ・・・慎の馬鹿っ!!!」 ギっ! 堂々巡りになりそうな考えに大きく溜息をついて、そう言いながら背中を反って反対側を、見た――――― 瞬 間 。 「・・・・・馬鹿で悪かったな。」 「!!!!!!!!!!!!」 目の前に、上下反転して瞳に映る、いるはずのないその姿。 見え難いけれど、ちょっと、笑っているような・・・・? 「・・・なにやってンの・・・」 コツ・・・ 髪をかき上げながら、だんだん、近付いてくる。 え、な、な、なんでっ・・・・! なんで、ここが。 ここにいる、って事が。 分かったんだよ・・・・・・!!! 言おうと思ったその言葉 ・・・は。 「・・・ばーか。お前の事なら何でも分かるんだよ。」 いたずらっ子のように、ニッコリと笑いながら近付いてきた、唇に。 「・・・ぁ・・・!」 「ん・・・・・」 逆向きのまま、吸い込まれ、た。 や、や、や・・なんっでっ・・・!!! 「んん・・・・」 吸い上げては自分の舌を絡めとる舌先。 何度も味わうようにゆっくりと舌を動かされて、ちゅ、と音を立てながら離れていく頃には、もう。 「あ・・・・」 「危ねっ・・・!!!」 ガタン・・・・! も、だめだ・・・ 身体中の力が抜けて、椅子ごと背中側に倒れ込んでしまった。 気付けば。 「おまっ・・・急に力、抜くんじゃねぇよ・・・」 ったく・・・、と溜息をつきながら自分を抱え込んだ、慎の顔が―――― ・・・・!!!!! 目の前一杯に、広がって、いた。 床の上に、自然自分が押し倒したような体勢。 や、やばっ・・・・・! 「ご、ごめ・・・っ・・」 これ以上は自分がヤバい、と慌てて身を起こそうとした。 「あ・・・!」 で も いつの間にか、腰に手を回されて、いて。 「・・・いいじゃん、このままで。」 「えっ・・・・!」 「嫌なのかよ?」 い、嫌なわけじゃないけど・・・そのっ・・・・・・!!! 「・・久美子。俺の目、見ろよ。」 「・・あ・・・」 きゅ、と。 慎の、大きな手が自分の両頬を、包み、こんだ。 「・・・久美子・・」 「・・・っ・・・!」 呼ばれた名前と、優しい笑顔に―――― ・・・ひゃ・・・!!!!!!! 再び、久美子の心臓は悲鳴を上げて止まらなくなっていたの、だった。 |
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