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【 ピ〜ス☆ 】
-2-



「セ、千・・・・・」

「はい、なんでしょうか兄役様?」

もう、ハクと侍従関係にある誰も彼もが憎らしい。

千尋は兄役にさえも、冷たい態度を取らざるをえないでいた。

「や!や〜、なんでもないがっ!その・・・・あまり根を詰めるでないぞ、ウンウン!ほれ、もう部屋に戻ったらどうだ?」

「ありがとうございます。では、お言葉に甘えまして・・・先に上がらせていただきます。」

千尋のいつもとは違う気迫に、兄役は全く歯が立たず、思っていたこととは正反対のことを言ってしまう。

「そうだ、千。ハク様が・・・・・・・・・・・・・・あ、いや・・なんでもない。」

『ハク』の名を聞くのも腹が立つ。千尋はジロ、っと兄役を睨むと、そのまま女部屋へ―――ではなく。眼下に遠くの町を見渡せる、裏手の方へと歩いていった。




「あーあ・・・・・・・・」

昨日の今日で、怒りが収まるわけはない。が、やはり一日中何も話していないと悲しくなる。

「私って・・ハクにとって一体なんなのかなぁ・・・・・」

ゴロン、と草の上に横になる。

「わーー綺麗・・・」

下には綺麗な夜景。天頂にはきらめく星々。そんな自然を見ていると、自分がとっても小ちゃく見えて。

拗ねて、怒って、嫌な態度をして。素直に、「どういう事?」って言えない自分。

「私って、ヤな女の子・・・・・・・・」

はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ。

ふかーくため息をつきながら、千尋はゴロっと横を向く・・・・と。

「!?」

そこに、二つの足が見える。右と、左。当たり前だが両方揃っている。

「・・・・・・・・・・・・。」

その人物は・・・・・・・・・顔を見なくても分かる。

「千尋・・・・」

ぼそっと低く自分の名を呟いた―――ハクであった。


む。

ヤな女の子、と自覚しつつも早々態度は変えられない。千尋はガバッと起き上がると、背を後ろに向けたまま、よそよそしい態度をとってしまう。

「なんでしょうか、ハク様?私、別にサボっているわけではなくて兄役様から・・・・・・・きゃ!!!!!」

言っている途中で、後ろからハクに横抱きにされた。

「や、やめ・・・・・・!!」

「黙って。」

ヒヤっ。

ハクの周りに、水でも張ってあるかのように冷たいオーラ。

〜〜〜〜〜何よおおおお!!怒ってるのは、こっちなんだからね!

「きゃ!」

そのうち、急にハクは自分を抱えたまま空へと浮かび上がっていった。

「ヤダ、止めてください、ハクさ・・・・」

「・・あんまり暴れると、落ちるよ、千尋?もう少しで着く。静かにしていなさい。」

うっ!

落ちたらたまったもんじゃない・・・・・・・・・・・

そう思い、千尋はどこに連れて行くのか知らないが―――黙ってハクに連れ去られていくのだった。




そして、着いたそこは。

ざぁっ・・・・・・・・

油屋も一望できる、高い高い、丘の上。

「ハ・・・・」

「千尋。どういったわけなのか、聞かせてもらえるね?」


自分が言葉を言う前に、千尋は先手を打たれてしまったのであった。





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